先日、「雲井の井戸」の傍で咲き出した「ホトトギス」をご紹介しましたが、花の数が増え盛りを迎えています。本日は山門の付近に咲く「ムラサキシキブ」をご紹介します。「ムラサキシキブ」は、紫色の実をびっしりつけることから「紫重実(むらさきしきみ)」と呼ばれていましたが、いつの頃からか紫色の清楚な美しさを、源氏物語の作者である紫式部にたとえて、「ムラサキシキブ」となっていったという説があります。
「ムラサキシキブ」の花言葉は、源氏物語の作者で才女として有名な紫式部から由来して、「聡明」「上品」「愛され上手」等があります。藤原道長座像が当院の本堂にございますが、潤沢な和紙を提供され、「紫式部日記」を執筆するなど、紫式部は道長から特別な愛情を注がれていたのでしょう。因みに「紫式部日記」は、彰子が出産し、敦成(あつひら)親王が誕生する記述が中心となっています。
敦成(あつひら)親王、後の後一条天皇の菩提樹院陵の正面の位置に「東北院」がございます。母である藤原彰子の発願で、長元3年(1030年)に、祖父道長の菩提を弔うための常行三昧堂として創建されました。晩年住処とした「東北院」が、母藤原彰子の別称となっています。
紫という色は、平安時代から最も女性に愛された色と、「栄華物語」に記されています。紫色は、女性の美しさを象徴する最たる色として伝承されてきました。その美しさを秋の深まりと共に、もう少し楽しめそうです。